東京から太平洋上約千キロ離れた小笠原諸島では、本年4月、NHKと民放計8チャンネルの地上波テレビ放送が始まる。従来のNHK衛星放送と合わせ、島で視聴できるテレビは合計10チャンネルとなり、東京都心と同じ番組がリアルタイムで届くようになる。この歴史的な時期に合わせて、テレビ地上波導入の事前調査と事後調査を行い、小笠原における情報化の実態を実証的に比較検討するという課題が本研究の目的とするところである。このため、平成7年度は、事前調査として、小笠原島民を対象にしたアンケート調査を、18歳以下の小・中・高生を対象とした調査と、18歳以上の成人を対象とした調査に区分して、実際のフィールドワークを2回にわたって実施した。テレビ地上波の導入が及ぼす影響の問題を考えるとき、子供への影響と成人への影響は、同じ一つの調査票でカバーすることは困難であり、調査内容も自ずから異なったものにならざるをえない。また、調査方法についても、子供調査は、小笠原村教育委員会の協力を得て、小・中・高の生徒を対象に、集合調査によって実施することができた。他方、成人調査は、18歳以上の島民を対象にいわゆる留め置き法によって実施した。 その結果、子供調査は、小学校39、中学生51、高校生40の合計130の有効票を得、成人調査は、父島666、母島154、合計820票の有効票を得た。既に、前者は集計を完了し、その一部については、研究分担者が参加したシンポジウムの席上、口頭発表の資料として利用した。後者については、調査票回収に予定以上の時間を割く結果となったため、3月末までに集計を完了し、結果の分析については、次年度に予定しているテレビ地上波導入の事後調査の結果と比較しつつ展開していく予定である。なお、今回の成人調査の10%集計によれば、本年4月のテレビ地上波導入の事業を「知らない」島民はいない。そのうち、導入事業に「賛成」は63%、「反対」19%、「中立」18%という状況である。
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