本研究は、ライフヒストリーの手法を用いた11名のインタビュー調査である。その研究対象は、43歳から70歳までの男性に限定されたものであり、教師文化と受験体制との関係、教師の昇進の問題に焦点を当てたものである。 分析の現段階での知見 1、学校タイプと授業への取り組み: 進学校においては、担任団が受験指導を推進するメカニズムとなり、学校全体に受験文化を形成させている。そのメカニズムにおいて、教師が個人的に受験指導の役割を回避することは困難である。もし、受験指導を回避することになれば、その学校の持つ学校文化から逸脱し、教師としての立場が危うくなる。他方、非進学校においては、逆に、担任団の関心が生活指導に向かうため、受験に関する授業は無意味になる。相対的には、進学校では、受験という同一の目標に向かって教師が組織化されているが、非進学校においては、教師集団の結びつきは弱い。 2、組合活動と管理職: (1)組合活動は時代を反映している。1970年代初頭の安保闘争との関わりで、組合活動が活発であったが、その後、衰退の方向にある。それは、一般的に、組合が問題としていたものが、政治的なものから職場の条件闘争に変化し、教員の経済的状況が大幅に改善されたことによる。そして、現在、政治的争点が不明確になったことにより、若い世代の教師の組合への加入率が低下している。 (2)組合活動の継続は、管理職への道の拒否である。組合活動にどれだけ関わるかの程度に応じて、管理職への昇進の意識が異なり、組合活動をしている教師は、組合活動に関与することは、管理職への道から外れることであると、意識している。また、管理職になった教師からの視点では、組合活動に関わる教師は、教師としての熱心さ、学校全体を見る視点の欠如している教師であると、批判的に言われる。
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