研究概要 |
本研究では3年間の研究期間内に,日本文化の地域的特質および民俗社会の変容過程を明らかにするために,民俗的な完結性をもった社会(民俗社会)において実態調査を進めた.具体的には青森県脇野沢村,同田老町,岩手県盛岡市,同北上市,同花巻市,山形県飯豊町,新潟県名立町,長野県立科町の中のいくつかの集落を対象として調査を行った.2年間にわたる反復調査によって明らかとなったことは,1960年代の高度経済成長が巨視的に見て流通経済と生活様態に大きな転換をもたらしたことが,民俗社会における生産組織の組み替えにいかなる影響を与えていったのか,技術革新が資源の利用との関連でどうとらえられるのか,といった点である.さらに住民の生活体験を,生活誌の方法を援用して聞き取り調査と現地に残された諸資料によって描くことにより,これまで十分に検討されてこなかった人々の感情の面にまで立ち入って,社会組織の編制要因を考察することができた.本分家関係や地主小作関係といった従来注目されてきた規定要因にもまして,そうした個々人の感情の占める比重が大きくなって来ていることが明らかになった.しかし,各地域相互の比較検討は今後の課題として残され,また,併行して行った文献目録の作成は西日本編を加えて刊行する予定である.
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