史料編纂所所蔵のオランダ国立文書館の文書をえらんでマイクロフィルムからやきつけ、これを整理する仕事に追われている。また手持ちのオランダ国立文書館の文書は、同館の文書のマイクロフィルム化が進行中のため、とびとびになっているので、二種類の文書を比較し、補う作業も進めている。 国内の史料の調査としては、大分県立図書館の佐伯文庫、香川大学付属図書館の神原文庫、武雄市文化会館の武雄鍋島家旧蔵の蘭書目録を調査した。このほか史料編纂所の島津家文書の蘭書目録、長崎市立博物館所蔵の蘭書目録、鹿児島大学付属図書館所蔵の玉里文庫の蘭書目録などのコピーを入手した。国内の図書館の場合、目録の完備しているところでは、現地に行かなくても、業者にマイクロフィルムの撮影を依頼出来る場合が多いことを知った。 11月26日に日蘭学会総会で「田沼時代とティチング」、12月3日に洋学史学会大会のシウポジウムで「ナポレオン戦争の日蘭貿易に及ぼした影響」について報告した。後者の質疑応答をつうじて、現在構想中の論文の作成のため貴重なコメントをいただいた。18世紀末から19世紀はじめにかけては、ナポレオン戦争のためオランダ船の来航が途絶し、オランダ東インド会社は解散するという激動期にあたる。しかし日本国内では、蘭学はますます発展し、オランダ人のもたらす情報の重要性が幕閣の中枢に認められた時期である。この時期についての論文を、英語と日本語の両方で執筆したい。
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