今年度は今まで集めた資料の中で、武雄鍋島家の蘭書目録、島津家の蘭書目録、香川大学の神原文庫所蔵の蘭書目録を選び、学生に入力を頼み、カタカナ書きの蘭書目録合計4000点弱が一応仕上がった。この目録は著者と出版社を混同したり、本の表題を省略したりしているため、全く不完全なので、これにオランダの原書の正確な表題を入れ、いくつもダブって記されている本を整理するのが当面の課題である。オックスフォード大学の図書館からマイクロフィルムを手に入れた1600年から1761年のオランダの書誌目録とBrinkmannの書誌目録1790-1882年(国際日本文化研究センターにマイクロフィルムを発注済み)により、これを能率良く進めたい。 これらの本が通詞を介してどのように売られたか、またどのような本が注文されたかについても着々と史料が集まりつつある。東洋学報に発表した論文は、輸入された本がどのように利用されたかを、ロシア問題を例として扱ったものである。 本の利用の問題を考える上で、長崎に大名たちが派遣した聞役の問題、あるいはさなざまな蘭学者、蘭学塾、さらに天文方、藩書調所、長崎海軍伝習所など幕府の諸機関で用いられたテキストも調べなければならない。これらについては、先行研究がいくつもあるので、これらの論文を手に入れ、幕府に至る時代について総合的に勉強している。
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