初年度に行ったバルカンおよび東欧諸国、旧ソ連の西部諸共和国の近代史と伝統社会の比較に基づき、本年度の研究目的はそれぞれの地域がかかえる民族・少数民族問題の比較・検討と現状の把握であった。そのため、分担者の報告と共同討議の研究会を公開で二回開催した。 柴が「バルカンの民族問題と現状」について、中井が「ウクライナ、ベラル-シにおける民族関係」について、安岡が「ロシアの民族問題と現状」について、それぞれ報告を行い意見交換した。いまのところ、納入した文献やマイクロフィルムの史料を駆使するにはいたってはいない。しかし、本年度に文献の整理が行われたため、それぞれがこれまでの研究蓄積に加え、広い視野に立って周辺地域のかかえる民族問題や民族関係を比較しながら、さらに研究を深めていく環境が整ったことは特筆すべきことであろう。 こうした現状の中でも、当該研究に関連する成果を柴が3点、中井が2点、安岡が1点発表している。十分な成果とは言えないが、共同研究をするなかで見えてきた視点を取り入れて研究は着実に進んでいる。
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