・まず、現代社会の異民族・異文化接触が引き起こす諸問題に関して、収集してきた文献資料を通読・分析することで、接触・対立・共存・同化・融合等の事例の整理を進めた。 ・同時に、ギリシアの植民(前野担当)やドイツ・ユダヤ人の同化(長田担当)に関する文献資料を、引き続いて各人が収集・分析することで、前近代・近現代における具体的な事例に関する知見をさらに深めた。それらの成果は、各人が雑誌論文・口頭発表等により公表した。またそれらを比較検討し、問題の性格に関する類似性についても確認した。前野が担当した時期の統合形態である「種族」も、長田の担当時期の「国民国家」も、多少なりとも「想像の共同体」から出発し、時間を経る中で、成員を統合する伝統・伝説・神話・共通の敵等を創り上げることで、1つのまとまりを作り上げようとしていたことなどが確認された。平成8年度途中で在外研究のため本研究を辞退した山代宏道・文学部教授によるノルマン征服後のイングランドの地域統合に関する研究も含めて、『研究成果報告書』には、それらを詳しくまとめた。 ・本年度中に各研究分担者は、それぞれ1回ずつ個別報告を行い、分担者相互間の理解を深めた。さらにそれが、現代世界における類似の問題を考察する際の手がかりとなるかどうかに関しても討議した。この点は、さらに具体例を洗い出すことで、今後も継続して討議する必要がある。 ・また、各分担者の個別テーマが、前近代・近現代のヨーロッパ社会においてどう位置づけられるかに関しても、今後とも討議を重ね、他の地域における事例との比較検討が必要である。
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