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1.飛鳥・藤原京、平城京、長岡京、平安京について内陸水上輸送関連考古資料・文献史料の収集、分析を進めた。飛鳥京に関しては、飛鳥時代初期以来、人・物資の輸送における大和川水系利用の恒常化、斉明朝における「狂心の渠」等の運河掘削による大和川水系利用の拡大と、宮都建設資財の水上輪送の本格的化、すなわち水上輸送の本格的展開が斉明朝における飛鳥の都づくりの本格化と相関する具体的様態を明らかにした。藤原京に関しては、飛鳥京での水運利用を継承しつつ、大和川水系小河川の幹線道路に沿わせての直線流路への改修、この改修河川への大規模運河の接続などを核とした水上輸送網の整備など、いっそう水運利用が本格的に展開した実態を明らかにした。これは宮都の排水路網の整備の問題とも相関し、水上輸送網・排水路網に関する新知見は、宮都建設の基本計画とその歴史的性格を考察する上でも重要な成果となる。平城京、長岡京、平安京については、淀川を利用した水運と木津・山崎津・淀津など河川港湾の実態と、それぞれの京内における堀川の掘削、利用の実態の解明を進めた。
2.市と水上輪送とについては、考古資料・文献資料の収集、検討を通じて両者の緊密な関係を明確にした。とくに平城京、平安京に関しては、堀川の掘削と水上交通の守護神である市姫神社・市杵島神社、姫寺が密接に関係することを明らかにした。藤原京についても横大路と中ツ道の交差点付近に市杵島神社と寺跡があり、米川が横大路に沿う直線流路に改修されていることを明らかにして、東市の占地の解明に成果をあげた。
3.地方官衙・寺院については多くの事例を収集・整理した。肥前国府と嘉瀬川水運、御子ヶ谷遺跡・伊場遺跡など東海地方の郡衙と水運利用、いわき市荒田目条里遺跡では夏井川の水運利用と津長の存在、更埴市屋代遺跡群では郡衙など公的施設と千曲川水運利用との密接な関係等、地方官衙・寺院における水運利用と津の設置等に関する新知見を得た。
4.中国・朝鮮半島における水上輪送関係資料の収集、整理を進めた。
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