研究概要 |
1,日本での石器から鉄器への転換は斧を中心に展開するので、本研究では石斧、鉄斧を中心に扱った。 2,石斧から鉄斧への転換は突然に興るのではなく、最初両者は併存し、徐々に鉄器へと移行するのである。 3,転換の時期は、九州など列島の西に早く始まり、東に行くほど遅い。九州では弥生時代前期末〜中期初頭に始まり、中期終末には終了する。畿内では中期前半に始まり、後期中頃〜後半に、東海より東では中期後半に始まり、後期後半に終わると推定される。鉄器化は西に早く始まり、東に遅れる。 4,石器は小形の片刃石斧から後退を始め、大形の伐採石斧は後にまで残る。 5,鉄器は鋳造鉄器片の一辺に研磨を加えて刃とした小形片刃斧に始まり、鍛造鉄器に移行する。前者は前期末に出現し、中期前半にピークとなり、以後補完的になる。後者は中期後半に出現し、鉄器の中心となる。 6,九州の片刃石斧の後退には鋳造鉄器片加工鉄斧の出現があり、伐採石斧の終焉には鍛造鉄斧の登場がある。鉄器化の開始が遅れる他の地域では、鍛造鉄器がどちらにも影響を与えた。 7,鍛造鉄斧には板状と袋状の二種類があり、後者の製作が技術的に難しい。九州は技術的に高度な袋状鉄斧が卓越し、畿内は板状鉄斧を主体に袋状鉄斧を少し伴い、東海より東は板状鉄斧だけとなる。このように鉄斧の製作技術も西に高く、東に低く、この状況は古墳初期まで続く。 8,弥生後期の鉄器の地域間の形態差、技術差は著しく、これは技術や鉄素材の流通が一体でないことを示す。
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