平成7年度には、主として、本研究で用いる、平安時代400年間の幅広い期間の、幅広い分野の和歌語彙をデータベース化したもの(約400作品・約7万首・約49万語)に対して、各種分類コードの付加作業を行ったが、付加作業が完了したデータを用いて行った研究成果としては、勅撰集と私家集の間で、使用語彙に大きな違いが見られた。とくに、自然を表す語彙(香・色・雨・雪・花・輝く・吹く・匂ふ等々)の使用が、私家集で使用率が高いのに対して、勅撰集は、予想外に低い結果が得られた。これが、何に起因しているのかまでは、まだ解明できていないが、全体のデータを総合的に見ない段階で、勅撰集と私家集との間に使用語彙の性格の違いがかなり鮮明な差が出たという点では、来年度、整備できたデータをもとに計画を推進していけば、これまでの和歌研究では得られなかった新しい問題点を提起し、解明できるものと思う。 ただ、平成7年度の研究の評価として、約49万語という大量のデータに対して、各種分類コードを付加するという作業に終始した感がある。その付加作業が遅れた大きな原因は、複合語の対する分類コードの付け方について、慎重に検討を加えたためである。 ただ、そうした検討を重ねた結果、データの99%に分類コードを付加することができ、重点領域研究「人文科学とコンピュータ」(数量分析班)の公募班「歌物語語彙の数量的分析と研究」代表者西端幸雄)の研究において、その一部のデータを活用し、また、 ・作品の分野で、並べ替えを行い、各分野<勅撰集・私家集・歌合・私撰集等>における、和歌語彙の特色を明らかにする。 という点は、各分野ごとの和歌の使用語彙の違いを分類コードをもとにある程度明らかにできたものと思う。
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