研究概要 |
平成7年度は基本的にデータ解析に重点が置かれたために、発表しえた研究成果は多くないが、すでにロマン派の詩という概念の中核に位置するワ-ズワス,コールリッジ,サウジ-といった所謂「湖畔詩人」といった分類が、文字テクストとしての共通特性によって可能となっているわけでは必ずしもなく、むしろ地理的隣接関係や友人,サークル関係を基盤とした当時のスコットランドにおける有力雑誌(『エディンバラ評論』,『季刊評論』,『ブラックウッズ・マガジン』)の書評者の非文学的判断に拠っている部分の多いことが明らかになりつつある。(但し、この点は更なる検証が必要)さらに一般にロマン派詩と連動すると考えられているゴシック・ロマンスにも、背景に合理主義思考法を前提としているものが相当数多いという点も指摘しうるし、フランス革命の影響が実はロマン派の特性を表わすという通説にも、一定度の疑問を呈し、19世紀後半の思潮から逆照射することで、ロマン主義概念のさらに明確な画定に向けての基礎固めができたと判断される。
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