研究課題/領域番号 |
07451096
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
HUGHES G.E.H. 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 外国人教師 (10281700)
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研究分担者 |
高橋 和久 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (10108102)
富士川 義之 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (20083264)
海老根 宏 東洋大学, 文学部, 教授 (90029653)
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キーワード | ロマン主義 / 文学史 / 反社会性 |
研究概要 |
文学史の定説として、ロマン主義は古典主義に続くものとして理解され、イギリスにおいてこの文学思潮はとくに詩の領域で顕著であり、いわゆる「ロマン派詩人」と呼ばれる一群の詩人たちが存在するわけだが、実は当の詩人たちは自らの作品の特性をromanticなりromanticismといった用語で規定しようとしたわけではなく、むしろ現在当然視されている文学史的な特性記述は、当時の有力な雑誌、Edinburgh ReviewやBlackwood's Magazine(ロマン主義の詩がイングランドを中心に生まれたにもかかわらず、こうした雑誌がエディンバラを拠点にしている点も注目を引く)によって用意された「湖畔詩人」といった詩人たちのグループ規定に依っていることが判明する。しかもこうしたグループ規定は作品の特性の共通性を抽出した結果生まれた、いわば批評手続きによるものではなく、まさに「湖畔詩人」という名称に窺えるように、詩人たちの交友関係や地理的な近接という物理的な関係から引き出されたもので、奇妙なことにそうしたラベルが成立した後で、それを追認するような批評的分析が行われてロマン主義概念が定着したようである。フランス革命に対する反応から生まれたその潮流は単に文学の一特性にとどまらず、社会に対立する個人という人間の捉え方に関わっているために、影響は極めて大きく、ヴィクトリア朝小説(典型的なハ-ディ)にも受け継がれ、さらには世紀末の反社会性を帯びた唯美主義文学にも影響を与えている。
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