本年度は本研究の最終年度にあたり、「現代英語のスタイル」を口語および文語面から総合的に検討した。口語レベルでは会話、ラジオ・テレビの放送、インタビューなどを取り上げて、言語特徴の記述分析を試みた。インフォーマルな会話については、語彙の曖昧性、「出だしの誤り」、躊躇や反復をはじめ文語文法では「誤り」と評価される特徴が顕著に認められ、そのいずれもが会話においては 'relaxation'の指標である事実を明らかにした。ラジオ・テレビの放送英語に関しては、現代のイギリスにおける「標準英語」の概念が、「河口域英語」の出現により変化しつつある現状を明らかにした。すなわち、かつての上流ないし上層中産階級に基礎をおいた「標準英語」が、下層中産ないし労働者階級の英語に近づきつつある傾向が明らかになった。 文語レベルではとくに新聞および小説のスタイルに重点をおき、新聞についてはイギリスにおける高級紙と大衆紙の表現上の相違にとくに注目し、前者の抽象的な表現と後者の具体的な表現が際立った差異を示すことを指摘した。また、新聞英語については口語の放送英語と関連づけて、スポーツの報道が文語と口語では異なり、新聞報道とラジオ・テレビ放送においては反復と変奏の分布が決定的に異なる事実を例証した。小説についてはngsley Amisに関して、John Braineなど同世代の作家に比較して会話の描出がきわめて「リアル」である特徴を明らかにした。また、小説における伝達部の表現に着目して、伝達部が作家のスタイルを反映する事実を現代英米の小説において実践した。以上の主な研究成果は学術雑誌「英語青年」(研究社出版)誌上で1997年10月号から1年にわたって公にし、1999年度には書物の形で公刊する予定である。
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