本年度の研究計画は空海筆「三十帖策子」を中心とする日本悉曇学創始期の悉曇第一次資料のディジタルデータベース化を図ることであった。研究計画の要点は以下のようにまとめられる。 1)画像データベース作成のための機材の整備 2)構築すべき画像データベースの様式・構造の決定(画像処理方法を含む) 3)上記様式・構造の画像データの試験的作成とその品質のチェック 4)データベースの基礎となる写真資料の収集あるいは作成 5)画像データの入力と整理 研究計画は予定通り進捗しているが、報告書作成時点(平成8年2月)では、報告すべき事柄は多くない。本年度に行った研究の概要を上記各項目について簡単に記しておく。 1)については、計画通り、未設置の機材・ソフトウェアを購入し、必要な研究機材の整備を終えた。データベースの様式・構造はこれらの機材・ソフトに依存するところが大きいが、2)、3)の作業もほぼ終了した。4)に関しては、「三十帖策子」等の写真版を調査・収集するとともに、昨年夏に、醍醐寺・東寺・仁和寺・高野山大学図書館において未刊行史料の現地調査を行った。研究対象となるべき若干の新史料を発見した。5)については、「三十帖策子」、「在唐記」の一部を除いては今後の作業として残されている。これは平成8年5月を目途に終了する予定である。また、画像データの収集・調査と並行して、基礎文献である空海等の「請來目録」、円仁『入唐求法巡禮行記』のテクストデータベース化を行った。
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