平成7年度は、主として現在の家庭生活と職業生活をめぐる問題状況を分析することと、比較法的検討を行うことに重点を置き、男女平等法理がもっとも発展し、かつ、労働市場の規制がもっとも自由化されているアメリカ、社会法的視点から労働市場の規制が厳格なドイツおよびフランス、そして社会福祉国家を志向し様々な実験がなされ、現在その見直しが進んでいるスウェーデンについて検討を行った。 平成7年度中は、研究分担者がそれぞれの分担国の状況について基礎文献の収集およびそれらの分析に多くの時間を費やした。年度の後半に数回の会合を持ち、研究分担者相互で各国の検討内容の中間報告を行い、その報告に基づいて、比較法的簡単から見た各国の制度の特徴の捕捉およびさらに解明すべき問題点の析出を行った。 検討を通じて、欧州とアメリカとで予想したような異なる展開を遂げている場面と、家族休暇のように両者に共通する現象とが観察され、これらを労働市場や労働法制全体との関係でどのように評価し、位置づけるかが今後の検討課題となる。 平成7年度の研究内容は、各国の制度の分析が主体であったが、家庭生活と職業生活をめぐる問題は、労働市場、労働法制、社会保障法制、税制等論点が多岐にわたり、かつ相互に関連しているため、分析は必ずしも容易でないことが認識された。また、アメリカと欧州では予想どおりに両極に位置づけられる場面と、家族休暇などように普遍的に見られる収斂傾向の二つが観察された。これらを労働市場や労働法制の全体像のなかでどのように評価するかが今後の課題である。そして、欧州における法制の分析からは、わが国では家庭生活と職業生活の「調和」のための施策と認識される問題が、実は硬直的な労働市場の柔軟化のための方途として採用されていることが明らかになるという新たな発見があった。このことは、同様の目的の政策と認識されているものが、労働市場の状況等で全く異なる目的のものとして理解されていることを改めて認識させる重要な点であった。
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