これまでの研究の重点が日本側より米国側におかれていたため、本年度に公表された研究成果としては米国側に関するものが圧倒的に多くなった。業績の一つは、公害未然防止政策が米国の連邦政府によって公式に採用された後、より一層急速に普及しつつあり、したがって政策的にますます成功とみなされるようになっている状況を、専門家や環境保護運動、そして環境保護庁などが果たしている役割と関連づけながら実証的に分析したものである。とくにここでは、公害の未然防止という「政策案」が重要な役割を果たしていたことが明らかにされている。 第二の研究成果は、「環境保護をめぐる政治過程」と題する分析であるが、これはアメリカにおける環境保護をめぐる政治過程の特徴を、比較政治的観点から考察した論文である。大統領制や選挙区制、政党の形態などの制度的特徴、強力な環境保護運動とそれ以上に強力な経済団体の存在など、政治過程における特徴などを、日本やヨーロッパ諸国との比較を念頭に指摘したものである。また、アメリカにおけるきわめて分権的な制度のもとにおいてこそ、専門家によって開発された政策案が重要な役割を演じていることを強調している。 今後は、このような政策案が日本側でどのように受容され、具体的な政策へ転化されたいくかについて、詳細な分析を行なっていきたい。
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