研究概要 |
(中馬)本年度は、昨年に引き続き4時点に渡る「賃金センサス」の個票を利用して、賃金プロフィルの変動要因を分析した。また、男女間賃金格差の縮小要因についても分析した。後者の分析結果によると、年齢計で見た場合、男女間(平均)賃金格差は、1980〜1994年の間に、もともとの賃金格差のみならず「賦存量格差」(=勤続、年齢、教育程度、産業、地域などの差)がないとした場合の賃金格差も着実に縮小していることが確認された。一方、「評価値格差」(=上記の属性に対する市場の評価の差)がないとした場合の賃金格差に関しては、減少傾向は見られなかった。したがって、少なくとも1980年〜1994年に見られる男女間賃金格差の減少傾向は、主に男女間の属性に関する差異が縮小することによってもたらされたことが確認された。「賦存量格差」を発生させている主要な四つの属性要因をインパクトの強い順に並べると、年次にかかわらずほぼ「勤続年数」、「職位・職階」、「(勤務する)都道府県」あるいは「教育程度」の違いとなることが判明した。 (小野)本年度は、労働力の調達方法(内部養成型か外部調達か)が企業内賃金構造にどのような影響を及ぼしているかについて、3時点に渡る「賃金センサス」に個票を利用して計量的に分析した。特に、「生え抜き」、「子飼い」をキ-概念として、雇用慣行の変質と労働市場の流動化との関係を検討した。 (都留)本年度は、従業員規模50人以上の民間企業を対象とする労使関係アンケート調査の個票を利用して,労働組合の労働条件効果と発言効果の数量的分析を行った.まず,労働組合が労働条件に及ぼす効果を現金給与額,労働時間から退職金額に至る労働条件の各事項別に推定したところ,組合が統計的に有意な改善効果をもつのは,所定内労働時間と退職金額だけであることが明らかとなった.次に,発言効果については,従業員の発言状況と離職率に対する労働組合の影響を分析した.その結果,(1)労働組合の存在は,労働条件や経営事情をめぐる従業員の発言を促進していることが確認された一方で,(2)離職率という結果変数に対しては労働組合は有意な影響をもたないことが析出された.
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