研究概要 |
山本は,中国の社会保険・社会保障制度とその改革についての基本研究を終え,その成果の一部をJETROに報告し、重慶市の社会保険制度改革に関するフィールドワークの結果についても報告書をまとめた。中国の社会保険・社会保障制度とその改革については、ほぼ把握できたが、企業内化されていた社会保険・社会保障制度が社会化されるにあたってはそうした改革が地方ごとに進められ、全国的すなわち中央政府・中央財政との関連が不明確で、財源の確保とその将来展望を未だ究めがたい点が大きな問題として存在する。また中国の社会保険・社会保障制度との比較研究を念頭においた日本の社会保障制度の再把握と整理を進め、その成果の一部をJICAでのセミナーで講義する。 二宮と藤川は中国経済圏における産業構造の変化及び貿易と投資・援助の流れに注目している。関連する統計データには、産業連関表、国民所得統計、輸入国の購買力と内外相対価格等があるが、これらについては、日経データ、アジア経済研究所、国際東アジア研究センター等の協力を得てかなりの情報を入手した。産業連関表を用いた分析に関しては、理論的サーベイとともに時系列での産業連関表の整備および中国経済圏の産業構造変化の分析を平行して行った。マクロモデル用のデータの整備についても継続中であり、概念の理解・調整などに手間取ったがほぼ利用上の目処がついた。社会経済的問題・環境的問題については,大連への現地調査をおこない、共同研究者との認識のすりあわせを行う。 伊藤は1995年の夏期休暇中に天津と大連に滞在し、中国経済の概況を観察した。天津では、経済技術開発区を中心に改革開放政策以降の経済発展状況を調査し、日系企業を訪問、アンケートを実施した。また、大連市では、日経企業への訪問、資料の入手を行った。これによって、中国の経済発展と外資系企業、とりわけ日本企業の役割についての視座を確立することができた。
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