今年度も、前年度に引き続き大戦末期から戦後にかけてのドキュメントを読んで、データを収集した。まず大戦末期に関していえば、ドイツ人民衆の茫然自失の麻痺状態の意味合いを知るためには、占領地の被支配民衆の活性化をにらみながら行う必要があることが明らかになる。ドイツ軍の撤退・難民や避難民の増大と連合軍の空襲とは、連合軍の勝利の一歩ごとに、様々の地下水脈を通じての情報取得を通じて、占領地非ドイツ系民衆の様々の抵抗運動を活性化させる。そのことはまた、第三帝国治安当局と人種主義政策当局が占領支配下のマイノリティ・少数民族・ユダヤ人への過酷な措置に一層の拍車をかけるポテンシャリティを高める。 被占領地の民衆や少数民族・マイノリティにとってドイツ支配の打倒は民主主義・民族自決・民族独立の実現であったが、ドイツを占領した占領軍の対独政策もまたその普遍的原則に基づくものでなければならなかった。その普遍的原則は第三帝国において抑圧されていたが、ドイツ人の中にこれまた地下水脈のように生き続けていた。科研費によって収集したドキュメント集(『1945年以降のドイツにおける政党政治の発展資料集』、あるいは、『マーシャルプラン導入実行に関わるドイツ連邦政府報告』など)は、そのドイツの戦後政治経済の担い手たちの多様な地下水脈の表舞台への出現を記録している。
|