日本の金融機関は、金融の自由化・グローバル化・情報化といった金融環境の変化に対応してリストラを図っている最中であるが、それは大きな困難に遭遇している。すなわち金融リスク管理の失敗がそれであり、その結果、金融機関の経営危機や破綻が多発しているのみならず、金融システムそのものへの信任が揺らいでいる。 システム・リスクのこれ以上の増大を阻止するには、なにが為されなければならないか。本研究では、まず情報開示の徹底によるモラル・ハザードの回避、オフ・バランス取引と時価評価の会計処理問題への対応、リスク対応的な預金保険料の導入、日本銀行の最後の貸し手機能の強化、決済システムにおけるリスク累積の回避、自己資本の充実と「含み益」算入の廃止などの改革が必要であることを確認した。これらの点では、米国のFDICIA法(1991年)や、BIS、IASC、IOSCOなど国際機関の対応が貴重な試みとして、参考になった。 しかし、金融リスク管理にはより抜本的な対応が必要である。金融技術革新につれて業務分野規制が無意味となり、その結果、競争が激化し銀行にとって収益の保証はなくなっている。利潤を求めて銀行はよりリスクの大きい分野へ算出し、業務多様化を図るであろう。こうした環境の下で、通貨を金融リスクから遮断し決済システムの安定性を確保する仕組みとして、本研究ではナロウバンク/コアバンクの構想がますます重要性を増していることを確認した。その上で、リスク遮断をより確実なものとする仕組みとして、子会社方式と金融持ち株会社方式の比較検討を行い、金融持ち株会社方式の優位性を見いだした。しかし、その場合にも米国において法人分離主義と相互依存仮説の対立があり、またファイヤー・ウオールの効果をめぐる懐疑論がある。こうした問題をクリア-し得る構想として、ナロウバンク/コアバンクが新たな意義を主張しうるとの確信を強めている。
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