| 研究概要 |
自動車と消費者の生活との関わりを考慮しながら,自動車の製品コンセプトの形成プロセスを明らかにすることが本リサーチの課題である。そのために、まず本年度は,開発者が乗用車に関してどのような概念を提案してきたのかを中心に研究を行った。また,これに併せて消費者側がこれをどのように受けとめているか,そもそも人々が自動車に関してどのような思いを抱き,どのような意志決定過程を経て購入し,どのように利用しているかに関する基礎的な研究を行った。
製品コンセプトは人によってさまざまに解釈される余地が存在するので,その意味で消費者の主観に依存しているといえよう。しかしその一方で客観的な実在として理解することもできる。この,一方で非常に主観的であると同時に,他方で客観的な特性をもつ製品コンセプトという概念を,まず先行研究のレビュー,既存資料の再整理を手がかりとしながら,堀り下げて考えてみる作業から我々は研究を始めた。そしてその作業を続けながら,実際に自動車会社のチーフエンジニアをはじめとした開発担当者数人に対して濃い内容のインタビュー行った。この過程のなかで,80年代以降,とくにコンセプト作りが意識されるようになったこと,営業サイドの意見と開発側の思いの葛藤,原価企画の進展のコンセプト作りへの影響といった点について有意義な知見が得られた。
消費者側の製品コンセプトの捉え方に関しては,どのような論点があり,どのような調査方法が有効かについて,多様な分野での先行文献をもとに研究を行った。そのなかには自家用車の保有とその利用といった交通行動分野での研究も含まれている。さらに調査を行う際に不可欠となる,被験者に想起させるために必要となる,ラップトップ方コンピュータを利用した情報の提示システムの開発作業も並行して開発をはじめ,プリミティヴなヴァージョンができたので実用実験を試みている。
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