研究概要 |
少数の標本を対象にして質問票調査を実施し、基本的な作業仮説を導き出した。この調査に基づき、老舗企業のいくつかの代表的な事例を対象として、インテンシブなケース・スタディーを実施した。これらの研究調査から、次のような、長期存続企業の本質に関するいくつかの理論を導き出した。 1)老舗企業の特質である3要素、商売、看板の継続性,家訓などの理念の存在、創業者一族による支配の継続性は、老舗の経済的な成果と存続性に影響を及ぼしている。 2)老舗企業の存続促進行動は、取引と技術の伝承と変革、伝統への挑戦,そして人的な継承の3つに要約されうる。 3)老舗企業の競争力強化行動は、強みの強化と弱みの克服の2つに要約されうる。 4)取引と技術の伝承と変革は強みの強化を導きだし、伝統への挑戦は弱みの克服へとつながっている。これによって、老舗企業の長期存続性が生み出されている。 5)こうした存続促進行動と競争力強化行動とを結び付ける方法論は、具体的にはそれぞれの事例によって異なるため、より多くの事例研究が必要になる。 今後の研究として、次のような方向性が求められることが理解された。 1)事例研究を蓄積することにより、存続促進行動と競争力強化行動とを結びつけ、老舗企業の長期存続性を生みだすための方法論に関する、仮説的な一般理論を確立する。 2)この仮説的な一般理論を検証するために、さらに多くの企業を対象とした質問票調査を実施する。
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