研究概要 |
本年度の研究は、昨年度までに実施してきた代表的な老舗企業の事例研究を基礎として導き出した作業仮説に基づき、100年以上の長期存続を実現している企業約200社を対象に質問調査を実施した。質問票回答企業90社の概要は、以下のようにまとめられた。 (1)平均存続年数198年、平均資本金6,642万円,平均売上高49.5億円,平均従業員数115名であり、それらは中堅企業の像である。 (2)老舗の特質である「家訓の有無」については、明文化の有無にかかわらず、73%の企業でその存在が確認され、企業の基本的指針として活かされていたり、精神的な支柱としての機能を果している。また、家督継承については、65%が「長子相続」を中心とした一族内の相続を志向している。さらに、屋号・社名の継承については、54%の企業が「変化なし」とし答えているにもかかわらず、主力事業の転換・多角化などの事業構造の転換を進めている老舗企業も少なからず見られる。 (3)長期継続の理由については、「取引先との良好な関係性」、「歴史の中で積み上げてきた伝統と技術の蓄積」などを挙げている。他方、同時に「経営態勢の近代化への努力」「事業や製品の開発」などを挙げる企業の割合が多いことは、特質すべき特徴である。 (4)さらに、調査結果のクロス分析・因子分析を行い、そこから、昨年に実施した事例研究から得られた仮説を指示する結果が得られた。すなわち、老舗企業の長期存続に不可欠な要素として、存続促進行動と競争力強化行動が導き出され、それらをいかに結びつけるかの方法論の違いが、それぞれの老舗企業の長期存続性(サステナビリティー)の違いをもたらすことが検証された。 本研究の最終年度である次年度は、これら事例研究および質問票調査を再考し、長期存続企業の戦略行動に関する一般理論の構築を行なう予定である。
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