研究分担者 |
中村 博昭 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助手 (60217883)
斎藤 毅 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 助教授 (70201506)
織田 孝幸 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (10109415)
桂 利行 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授 (40108444)
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研究概要 |
n次元の滑らかな射影的多様体Xとその上の豊富因子Hを考える.東工大の藤田隆夫氏はつぎのように予想した:因子の線形系mH+Kはmがn+1以上のとき自由になり,n+2以上のとき大変豊富になる.この予想は次のより強い予想から従う:(1)(H^n)>n^nでかつ任意のdと任意のd次元部分多様体Wに対して(H^dW)がn^d以上になるならば,H+Kは自由になり,(2)(H^n)>(n+1)^nでかつ任意のdと任意のd次元部分多様体Wに対して(H^dW)が(n+1)^d以上になるならば,H+Kは大変豊富になる.例えば,X=^<pn>ならば以上のことは容易に確かめられる.また,n=1ならばリーマン・ロッホの定理から,n=2ならばReiderの結果から従う. 以前に証明した固定点自由化定理の論法が使えるので,今年は自由性の予想(予想の前半部)を考え次のような結果を得た: n=3のときは強い予想が正しく,n=4のときは弱い予想が成り立つ.n=3のときは,Ein-Lazarsfeldと藤田の先立つ結果やEin-LazarsfeldとHelmkeの結果を使った. この証明の過程で,対数的標準特異点の極小中心部分多様体という概念を得た.極小中心部分多様体の特異点の解析が重要であることがわかったが,それが標準因子のadjunctionという操作と関係することに気づいた.そして,Knudsenによる点付き安定曲線の分類空間を使うことにより,極小中心部分多様体が余次元2以下であるときは高々対数的末端特異点のみを持ち,特に有理特異点のみを持つことを証明した.
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