研究概要 |
矮新星は,典型的には数10日に一回の割合で数等級の爆発を繰り返している星である。矮新星の爆発の原因としては,当研究代表者が1974年に提案した「降着円盤の不安定性モデル」が現在世界的に広く受け入れられている。しかし観測的には矮新星の爆発の光度曲線にはいろいろのバライティがあり,これらすべてを「円盤不安定性モデル」により統一的に理解しようというのが,本研究の目的である。 平成9年度の研究としては,矮新星かに座EG星の特異な光度曲線の再現を試みたことである。矮新星かに座EG星は,1996年12月に19年ぶりに爆発を起こした。この星は,爆発の頻度が低いが,一旦爆発が起こると爆発の規模の大きい「や座WZ型」の矮新星である。今回の観測でもっとも奇妙な現象は,大規模爆発終了後,約7日の間隔で短い爆発が数回も立て続けに観測された事である。 この現象の説明として次のようなモデルを検討した。すなわち,静穏時の降着円盤の粘性パラメータαcは極端に小さいと考えられている。ところが,この星の今回の爆発で降着円盤が不安定になり,爆発終了後も,その影響を受けて,粘性パラメータαcがもともとの小さい値にはまだ戻っていなく,比較的大きな値に保たれている。その結果,短い時間間隔で熱不安定が起こり,小規模爆発が繰り返されたとするものである。この考えに基づく数値シミュレーションを実行した結果,この星で観測された小規模爆発を再現出来ることが分かった。
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