1トリガー用シンチレータの改造:前方に集中し多重度の高い電磁過程を除くため、シンチレータを使った荷電粒子角分布測定・多重度測定を行う。今年度は標的周りを細い短冊型シンチレータで囲み、ファイバーで磁場外まで信号を取り出した。 2シミュレーション:本研究専用計算機(UNIXワーク・ステーション)を導入できた。これによりシミュレーション・コードの開発が終了し、従来に比べ5倍以上の計算パワーを達成した。効率良い運動量決定プログラムの開発を進めている。 3実験の実施と解析:核研電子シンクロトロンで実施したガンマ・ヘリウム核反応ρ^0生成実験データ解析を進め、π^+π^-不変質量分布から現象論的解析によりρ^0の質量・巾を決定しつつある。この結果 (1)原子核標的では1GeV以下でもρ^0が生成されることが初めて実証できた。 (2)生成断面積は10μb程度であり、ほぼ予想通りであった。 計画当初に比べ、更に多くの理論的研究(質量減少の大きさに違いがある)が公表されているにも関わらず、実施された実験的研究は本研究のみである。この意味で、カイラル対称性回復の兆しを探す本研究は一層意義を深めている。中重核的実験が数ヶ月遅れている点を除けば、当初の計画に従い、TAGX(タグ・エックス)共同研究グループの協力を得てほぼ順調に進行している。当初不明であったρ^0の生成断面積が決定できたことは、本研究を進める上で大きな励みになっている。
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