各種大気ニュートリノの絶対流束を精度良く決定するために以下の研究を行った。 (1)BESS超伝導スペクトロメータの粒子識別能力を向上させるため、アクリルチェレンコフカウンタと鉛を組み合わせたシャワーカウンタ及びエアロジェルチェレンコフカウンタの開発及び搭載用実機の設計・製作を行った。さらに高エネルギー物理学研究所のテストビームを用いてそれらの性能を評価した。 (2)平成7年夏にカナダ北部において宇宙粒子線観測気球実験を実施し、高度37kmの高空における20時間の観測で得られたデータから一次宇宙線陽子成分のエネルギースペクトラムを0.4〜100GeVの運動エネルギー領域において10%以下の精度で求めた。さらにこれまでのBESS気球実験のデータを用いてスペクトラムの経年変化を調べ太陽活動の変動が一次宇宙線に与える影響を明確に捉えた。 (3)平成7年冬に高エネルギー物理学研究所において、また平成8年夏に磁気限界硬度の小さなカナダ北部においてそれぞれ地表レベルにおける宇宙線正負ミュオン粒子のエネルギースペクトラムの測定を行った。得られたデータから地表レベルにおける宇宙線正負ミュオン粒子のエネルギースペクトラムを0.4〜100GeV/cの運動量領域において2%以下の精度で求めた。 (4)大気と一次宇宙線の相互作用をシミュレーションする計算機コードの整備を進めた。また大気ニュートリノの絶対流束の計算に不可欠な、観測時の地表での大気圧や地表から高空までの大気の温度分布などの情報を収集し、各種大気ニュートリノの絶対流束を5%以下の高精度で決定すべく努力を続けている。
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