研究概要 |
スーパーカミオカンデ実験では,水タンクの完全密閉化,水タンク上部の空間へのラドンフリーエア-の注入,純水中の溶存微粒子の除去技術など,ラドン濃度を低減させる努力を行っている。これらを監視するために,0.005(Bq/m^3)までのラドン濃度の測定が可能な超高感度ラドン検出器6台を含む,ラドン・純水監視装置が設置されている。これら装置の観測データから,現在水タンクの純水中のラドン濃度は0.01(Bq/m^3)まで低下していることがわかった。このラドン濃度はカミオカンデ実験の1/50であるが,さらに0.005(Bq/m^3)まで下げる研究が継続されている。この結果,いわゆる「太陽ニュートリノ太陽問題」をつきつめる上で極めて重要な課題である,太陽ニュートリノ観測のエネルギー下限値を5(MeV)まで下げることが実現可能となってきた。 われわれのラドン検出器は,兵庫県西宮市の深さ約20mの観測井に設置されていた。当装置は1995年1月17日の兵庫県南部地震の発生の1ヶ月程前から地下水中のラドンガス濃度の上昇を捕えはじめ,10日前には通常の20倍以上にも達した。結果的には阪神大震災の前兆現象を捉えたことになる。これらの観測結果は米科学誌サイエンスに掲載された。このように震源のすぐ近くで観測され,大きな異常変化を観測したのは異例であり,地震の前兆現象として予知研究に極めて貴重なデータと評価されている。 岐阜大学で開発されたラドン検出器は,地震予知のための地下水中ラドン濃度連続観測,水循環と地球環境の解析などの応用分野の研究に利用されている。代表的な研究例を列記する。 東京大学宇宙線研究所「スーパーカミオカンデ実験」 通産省工業技術院地質調査所「工業技術院特別研究・地震予知技術」 動燃事業団東濃地科学センター「陸域地下構造フロンティア研究」 国立極地研究所「第37,38次南極地域観測」
|