本研究の目的は、CERNにおいて原子核乾板を用いたミューオンニュートリノとタウニュートリノ間の振動測定実験を遂行するにあたり、ミューオンニュートリノによるニュートラルカレント反応で生成されるパイ中間子と原子核乾板とのホワイトスター反応が我々の研究対象であるタウ崩壊のバックグラウンドになる可能性があるため、ホワイトスター反応の発生頻度、振る舞いを調査することである。 平成7年度、平成8年度の2カ年にわたり、以下の標題「原子核乾板内におけるπ中間子によるホワイトスター生成の研究」について科学研究費補助金(基盤研究(B)(2))を受け研究を遂行したので研究成果を報告書にまとめた。 平成7年度より実施した研究作業項目を時間的に列挙する。 (平成7年度) (1)原子核乾板のテストモジュールの制作とそれのビーム照射を行い原子核乾板標的の形状を最適化した。 (2)原子核乾板を保持しかつ乾板中の入射粒子数密度を一定に保つために必要である台座を制作した。 (3)この台座に高精度飛跡検出器を合体させたシステムを制作した。 (4)データ読みとり回路によるテストを行い、これらの制御などに必要なソフトウェアの整備および原子核乾板標的などの全体を完成した。 (平成8年度) (5)KEKにおいてパイ中間子を照射した。 (6)照射終了と同時に原子核乾板を現像し、顕微鏡による測定の準備を完了した。 全体の原子核乾板の測定は、順調に進んでいるが、非常に煩雑な操作、機能が必要であることが新たに判明したため、今年度中に全ての測定を完全には完了していない。しかし、当初の目標についての暫定的な結果は得られている。数カ月後には完全な結果が得られる予定である。
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