本年度は、温度可変走査トンネル顕微鏡を取付けるための超高真空容器を組み立て、それに備品で購入したスッパタイオン銃を取付けた。また、備品で購入したロックインアンプを用いて、走査トンネル分光が行えるように、走査トンネル顕微鏡のソフトウエアーを改良した。高性能のロックインアンプを使用できなかったため信号雑音比は目標値には達しなかったが、走査トンネル分光ができるようになった。今後の改良により性能を向上させる見込みがついた。走査トンネル顕微鏡本体を改良して、温度可変とするために、低温でも動作可能なピエゾ素子を設計・製作した。これの動作電圧に対する移動量を測定し良好な結果を得たので、温度可変走査トンネル顕微鏡の設計を行っている。 既設の極低温走査トンネル顕微鏡を用いて、銀吸着および金吸着ゲルマニウム(001)面の超伝導探索を引続いて行った。トンネル顕微鏡本体と電子回路等の改良によりより精密にトンネル分光が行えるようにした。これにより、銀吸着ゲルマニウム(001)面では以下のことが明らかとなった。1)銀が島状に結晶成長している。2)島上では、トンネル特性はクーロンブロッケイドの特徴を示す。3)島と島の間の平坦な部分では、10Kで金属のトンネル特性、2.9Kで状態密度に弱いギャップを持つトンネル特性がある。これらの結果は、抵抗測定と矛盾しない超伝導が、表面平坦部に存在することを示唆する。また、金吸着面では、金属の特性を得ているが今のところ超伝導の兆候は検出されていない。
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