超高真空温度可変走査トンネル顕微鏡の作製を継続した。走査トンネル顕微鏡本体の取付けを行い室温において目標とする半導体表面の原子像を得た。これでは、低温でトンネル分光を行っている銀吸着ゲルマニウム(001)面の高解像度表面観察を行った。さらに、試料温度を液体窒素を用いて冷却できるような装置を取付けて調整を行っている。また、既設の室温の走査トンネル顕微鏡を用いて、連続レーザー光をシリコン表面に照射し、その表面の局所電子状態の違いにより、トンネル電流がどのように変化するかを調べた。その結果、可視光では、半導体表面附近のペンドペンディングが変化して、有効的にバイアス電流を変化させた効果を観測できることがわかった。また、赤外光を用いた場合には、探針を熱膨張させることにより探針と表面との距離を制御し、局所的な電子波動関数のしみだしの空間依存性を観測できることがわかった。これらの現象を用いて、表面吸着種による信号の違いを探索した。 極低温走査トンネル顕微鏡は、4.5Tまでの磁場中での顕微鏡観察やトンネル分光ができるようになったので、超伝導の兆候を見出している銀吸着ゲルマニウム(001)面と、層状超伝導物質であるNbSe2に鉄微粒子をのせた系で実験を行っている。銀吸着ゲルマニウム(001)面では、磁場中で探針と表面との距離に依存しない非線形なトンネルスペクトルが場所によってどのように異なるかを調べ、磁束侵入の証拠を探している。また、Fe/NbSe2では、鉄微粒子の磁性によって局所的に超伝導が破壊される様子を定性的に明らかにした。
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