研究概要 |
H_2O氷は日常生活から宇宙の次元まで,人類にとって重要な物質である。本研究の目的は,超高圧力下における光散乱実験により,未知の弾性的性質の解明と氷のVI, VII, (VIII)相の存在域を考察しようとするものである。 我々のグループが世界に先駆けて開発した超高圧力下のブリルアン散乱スペクトロスコピーを用いて,次の事項を明らかにした。 1.室温において,氷(H_2O, D_2O)のVI相(正方晶系)の音速,屈折率,6つの弾性定数(C_<11>, C_<12>, C_<13>, C_<33>, C_<44>, C_<66>)を圧力範囲1.05【less than or equal】P【less than or equal】2.1GPaにおいて決定した:C_<11>=32.8, C_<12>=11.8, C_<13>=14.7, C_<33>=27.8, C_<44>=6.3, C_<66>=5.9GPa(圧力1.23GPaで)。この結果より,VI相のクラスレート構造の分子間力がVI相の基礎要素であることを確認した。 2.氷VII相(立方晶系)の上記の弾性的性質を初めて決定した:例えば,圧力4.7GPaでC_<11>=57, C_<12>=31, C_<44>=32GPa。これにより熱い氷と言われるVII相の超安定性を解明した。 3.上の結果より,P=2.1GPaでの氷VI→VII相の転移が弾性的性質の大きな変化を伴って起ることを明らかにした。 以上の成果は,全て世界初であり,各分野から注目された。
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