〈3d遷移金属酸化物薄膜の作製と光学スペクトルの測定〉 La_<2-x>Sr_xNiO_4、Nd_2NiO_4、PrBa_2Cu_3O_<7-δ>の薄膜を作製し、その構造をX線回折などによって評価した。まず、上記の物質の焼結体を作製し、それをターゲットとして用いるレーザーアブレーションによって成膜を行った。La_<2-x>Sr_xNiO_4とPrBa_2Cu_3O_<7-δ>では、基板温度を制御することによってc軸配向膜を作製することがでいた。しかし、Nd_2NiO_4では、配向性が基板表面の粗さに敏感であること原子間力顕微鏡観察から分かった。これらの酸化物試料の光学スペクトルを遠赤外光領域から紫外光領域まで測定して、化学ド-ピングによる金属-絶縁体転移と光学スペクトルとの関係を調べた。La_<2-x>Sr_xNiO_4では、酸素量を変えることによって電荷移動ギャップに関係した吸収帯が減少し、ギャップ内状態に起因する新しい吸収帯が現れることが分かった。さらに、Srのドープ量を変えるとキャリヤがドープされ、ギャップ内状態に関係した吸収帯が現れた。このようなギャップ内状態は、銅酸化物におけるMid-IR吸収帯に相当すると思われる。一方、PrBa_2Cu_3O_<7-δ>の酸素量を変えた場合、CuO鎖内の遷移による吸収帯と電荷移動吸収帯は減少し、ギャップ内吸収が増加することが分かった。以上の結果から、フォトド-ピングによるギャップ内状態の変化を、フェムト秒パルス光を用いて調べることが可能になった。 〈CuO面の電荷移動励起状態の緩和ダイナミクス〉 化学的ド-ピングを行っていないYBaCuO、NdCuO薄膜を、700〜900nmのポンプ光で励起して、電荷移動励起子を生成し、電荷移動吸収帯の過渡吸収スペクトルの測定を行うために、0.5〜1.3eVの赤外光領域におけるプローブ光検出装置を整備した。フォトド-ピングによるDrude型吸収の立上りとMidIRを測定する準備ができたので、次年度以降実験を行う予定である。
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