1.力の距離依存性が弱い引力領域で原子分解能を実現するため、超高感度な変移検出を実現する必要がある。そこで、ノイズ成分の極めて少ない光源と安定な駆動回路を購入し、高感度な光干渉計を実現した。また現有の周波数変調回路を改良し、高感度に探針の共振周波数シフトを検出できるようにした。 2.引力は一般に長距離力であり、探針先端の形状が空間分解能を大きく左右する。引力領域で単原子観察を実現するには、原子レベルで先鋭で清浄な探針を使用することが必要不可欠である。そこで、現有の超高真空装置に探針の先鋭度や清浄度を評価できるように電界イオン顕微鏡を付加した。 3.引力領域で原子分解能を実現するためには、原子間距離に相当する間隔(5Å以下)まで探針先端を試料表面に近づける必要があると予想される。しかし、このような距離では、試料表面の引力勾配が急激に大きくなり、この引力勾配が板バネのバネ定数より大きくなると、探針が試料側に突然ジャンプし接触してしまう。そこで、引力領域での原子分解能測定に必要な引力勾配の大きさと探針先端の曲率半径との関係を理論的に検討した。 4.III-V族化合物半導体であるインジウム燐の(100)劈開表面において、引力領域で原子分解能測定することに世界で初めて成功した。また、原子レベルの欠陥や吸着物の測定にも成功した。これは、原子間力顕微鏡が探針先端の1個の原子によって表面を観察できることを初めて実証した画期的な成果である。
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