1.超高真空で劈開することにより、簡単に清浄な表面を得ることのできるインジウム燐やガリウムヒ素(III-V族半導体)の(110)劈開表面を取り上げ、引力領域での原子分解能測定に必要な引力勾配の大きさを実験的に検討した。この結果、原子レベルの欠陥や吸着物を安定に測定できるようになった。これは、原子間力顕微鏡が探針先端の1個の原子によって姫を観察できることを初めて実証した画期的な成果である。 2.探針を機械的に振動させる2つの動作方式(一方は、探針の振動振幅を一定にする方式であり、他方は、探針の加振振幅を一定にする方式である)を比較した。その結果、加振振幅を一定にする方式の方が、試料表面へのダメ-ジが少ないことを見いだした。 3.加熱清浄化処理により得られるシリコンの再構成表面を、探針と試料表面間に働く引力勾配を変化させながら観察し、表面に弱く結合した原子(アダトム)を原子分解能で安定に観察するための引力勾配の大きさを実験的に検討した。 4.シリコン再構成表面の活性な原子(アダトム)を原子分解能で観察した場合、その画像化機構には、2種類あることが判明した。一方は、探針先端の原子と試料表面の原子との間に働くファンデル・ワールス力や静電気力などの物理的相互作用による力である。他方は、探針先端の原子と試料表面の原子との共有結合力、すなわち、化学的相互作用による力である。また、画像化機構によって単原子観察条件が大きく異なることを見いだした。
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