超低温(1mK以下)の超流動^3He中での核整列状態の個体^3Heの結晶成長(融解過程を含む)の研究は、核整列個体では固化の潜熱が非常に小さくなり、かつ液体は超流動状態であるので熱伝達および物質移動が良いので、^4Heの場合と同様に、精密な結晶成長の研究が期待される。特に、^3Heの結晶成長の興味深い問題点は、結晶成長に伴う超流動と固体^3Heの大きな磁化の差によるスピン流の影響が挙げられる。 本年度は結晶成長の研究に用いる核磁気共鳴による磁気映像法(MRI)の技術を開発し、その予備実験を行った。MRIは医学の分野を中心に急速に発展したが、本研究におけるMRIの技術開発の重点は(1)サブμKの超低温でMRIを適用出来るように静磁場勾配法を用いた3次元MRIの画像処理と自働計測のソフトを開発することと(2)空間分解能の限界を極めることである。 予備実験として希釈冷凍機で得られる数10mK温度域での^3He-^4He混合液の相分離界面の形状を精密に決定し、^3He-^4He相分離界面の界面張力と界面と試料室の接触角を決定した。これは新しい界面張力の決定方法であるが、得られた界面張力の値は既存のものと良く一致した。空間分解能は10ミクロンと推定されるが、今後最適化を計り限界を極める計画である。又、^3He核スピンの磁化の空間的な回復の様子を映像化することが出来た。現在、超低温での^3HeにMRIを適用するための超低温生成用冷凍機の建設とMRI用スプリット型高均一度超伝導磁石を準備している。
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