初年度、マグネット作製において重要な二点を発見した。ひとつはコイル部はエポキシ樹脂等を流し込むことによって一体化させる必要があること。もうひとつはコイル部を外部からマルエージング鋼によってバックアップすることで線材の強度を実質的に上げることが可能なことである。これによって、銅線を使ったマグネットで20mmφの空間に60テスラを発生することに成功した。 次年度はコイルの線材強度に対する依存性をしらべた。結果は、銅銀合金線を使ったマグネットで71テスラを18mmφの空間に発生することに成功した。 最終年度、71テスラを発生することに成功したマグネットの再現性及び耐久性を調べて、69テスラを8回連続的に発生可能である事が分かった。実際の測定においては65テスラまでの磁化曲線を液体ヘリウム温度で測定した。我々はさらに磁場の上昇を目指し、このマグネットの内側に1層コイルを追加してテストを行ったところ、内径13.5mmの空間に77テスラの磁場を発生した。しかし、この結果を解析すると、追加した1層コイルと外側のコイルとで発生している磁場がそれぞれ8テスラと69テスラであり、外側のコイルが十分に機能していないことが分かった。この結果を追加したコイルの外側に及ぼす影響のために生じていると考え、内側のコイルのみを補強する目的でマルエージング鋼製のパイプを1層コイルの外側に配置してテストを行ったところ80.3テスラの磁場を10.5mmの空間に発生した。これは外側のコイルが71テスラを発生しており、目的が達成されていることが確認された。この磁場は非破壊で実用的な空間に発生するタイプとしては世界最高記録である。今後、二層目以降のコイルに対してもマルエージング鋼による補強を行う事で100テスラの発生が可能と考えられ、本研究課題である100テスラでの磁化測定への大きな前進を示している。
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