I.銀銅合金ビッターマグネットの開発 銀銅合金は純銅に比べ約2.5倍ほど応力に強い材料であり、かつ電気伝導も大きくは損なわれておらず、ビッター板材料として期待できる素材である。銀銅合金(50%-50%)材料の引っ張り強さは約70kg/mm^2であり、実用上約30Tの磁場の発生に耐えられるものと考えられる。銀銅合金(50%-50%)材料を使用したパルスマグネットの試験は東北大学院金属材料研究所で行い、32.5Tが実現出来ることが分かった。しかしながら多数回の磁場印加に対する耐久性にはなお問題があることが判明した。現在の問題点は、 1)ビッター板の継ぎ目付近で亀裂が発生し、ビッター板の積層方向に対して系統的な破壊が起きている。 2)マグネット内径において沿面放電が発生している。 II.ビッター板中の温度の発生、伝達、分布の観測。 瞬間的に大電流がマグネットに流れた時、電流はマグネット最内径に集中して流れる。この現象は過渡的現象で、解析的な解はよく知られておらず、経験的に電流密度は(r-r_0)^<-5>と言われている。従って、パルスマグネットの破壊、問題の発生は内径面に限られるわけであるが、同様に熱の発生も内径部分に瞬間的に発生する。従って、瞬間温度上昇、亀裂、放電の相関をとるために特殊な温度計測系を作製し、温度の精密測定を行った。その結果、実用的には内径で最大800度の温度上昇が予想されることが分かった。 III.安全対策 パルス強磁場の発生には瞬間的高電圧-大電流を印加する必要があり、放電事故等による安全対策が非常に要求される。本年度は不測の事故を未然に防ぐために人的、装置的安全対策を講じた。
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