本研究では典型的強磁性及び反強磁性ラジカル結晶を加圧することにより、分子内に局在する不対電子スピンの局在性及び相互作用空間の次元性を連続的に制御しつつ磁気相互作用機構及び電子状態の解明をめざすことが当面の目的である。本年度の計画のうち (1)強磁性及び反強磁性純有機ラジカル結晶の系統的準備については、p-NPNN(ferro)の20kbarまでの加圧下用の試料を入手しており、極低温における比熱・帯磁率の同時測定を年度内に終得る見通しがついた。一方フェルダジル基の誘導体試料も向井(愛媛大)より新しく4種の結晶が入手できた。 (2)0.1Kまでの高圧磁場下比熱・帯磁率同時測定の続行及びSQUIDシステムの設置については、p-NPNNの7.7kbarまでの測定結果をとりまとめて公表中である。更に高い圧力値にたいする測定を購入した備品を組み合わせて制作中の測定システムを用いて年度内に完了の予定である。 (3)測定の続行及び実験結果の整理と分子軌道・ハバ-ドモデル等のモデルハミルトニアンに基づく理論との対応については、新たにp-CDpOV(フェルダジル誘導体)の測定を行い、この結晶が一次元ハイゼンベルグ系強磁性体に対する量子統計理論による厳密解で極めて精度よく再現できることを見いだした。その解析は以下の専門雑誌に公表した。他の誘導体試料についても系統的に帯磁率測定を行い、見込みある試料を探索中である。
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