研究概要 |
磁気光学トラップ(MOT)に引き続き偏光冷却(PGC)を行うことで、約10μKという超低温のルビジウム原子集団を得ることができた。また,dark MOTと呼ばれるMOTを改良した原子トラップを作ることで、原子の密度を以前の1.5倍にすることができた。 本年度は、本格的な二光子レーザー発振実験を行う予定であったが、1995年にアメリカで始めて実現された中性気体原子のボ-ズ凝縮の実験を国内でも早く行うべきだという風潮が高まったため、国内においてその最前線にいる当研究室が率先して行うことに軌道修正した。そのため、二光子レーザーの実現は多少先に延びることになってしまった。 一方で、ボ-ズ凝縮をめざした研究は飛躍的に進んだ。アメリカの手法を踏襲した方法によるものも、光によるトラップから磁場だけのトラップに移行する部分をクリアしており、ボ-ズ凝縮までもう一息である。 また、それ以上に強調したいのは、全く新しい方法による中性原子のトラップが実現できたことである。この新しく我々が開発した方法は、断面がド-ナツ状のレーザー光を用いるものであり、従来の方法よりも簡便でかつ高性能なトラップが実現できる。特に、磁場を用いずにすべて光のみで行うため、トラップした後の原子を自由自在に操作することが可能である。さらに、ここで開発したトラップは原子が外場がゼロになるところにトラップされるため、物理の基本原理を検証する実験に大いに役立つものと考えられる。 このように当初の予定は達成できなかったが、それ以外の部分で非常に大きな成果をあげることができた。
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