研究概要 |
本研究は、半導体レーザーをヘリウム温度にまで冷却し、電子緩和時間が非常に長くなった状態での超低電流でのレーザー発振を実現し、発振スペクトルの解析、端子電圧の解析、表面第二高調波発生効率、ホールバーニング効果、および、発振光自体をプローブ光として半導体レーザー媒体(主としてGaAs,AIGaAs系)の低温物性の研究を行うことを目的としている。また、ヘリウム温度下で量子構造の半導体レーザーに磁場を加え、GaAs系半導体のMagneto-Optical効果、Magneto-resistance、量子ホール効果などレーザー媒体の低次元系としての振る舞いの研究を行う。2次元電子系、メゾスコピック物理系と光の相互作用として極低温下での半導体レーザー発振を見直すことによって、新しい物理が開けてくるのを期待している。 極低温で半導体レーザー(LD)のV-I,P-I特性の磁場効果などの多数のパラメータを同時測定できるコンピューター制御の計測システムを製作した。ヘリウム温度で多くのLDの立ち上がり電圧はバンドギャップの数倍5-9Vにもなり、また、発振開始電流は1-10mAで、期待していた低発振電流とすることは出来なかった。また、低温における熱伝導の低下によりLDによっては、非線形な電圧電流特性、光特性にヒステリシスを示すものがあった。多くのLDで、0-5Tにわたり負の磁気抵抗が観察された。励起電流を一定にして、LD出力光を内部フォトダイオードで測定しながら、磁場掃引したところ、出力の増加する共鳴現象を0.3T付近に観測した。現在この共鳴の性質は不明であるが。この磁場でのサイクロトロン共鳴周波数とモード間ビ-ト周波数とが等しいことから、モード同期による発振強度の増加ではないかと考えている。
|