研究概要 |
本研究は、半導体レーザーをヘリウム温度にまで冷却し、電子緩和時間が非常に長くなった状態での超低電流でのレーザー発振を実現し、表面第二高調波発生効率,および、発振光自体をプロープ光として半導体レーザー媒体(主としてGaAs,A10aAs系)の低温物性の研究を行うこと、また、ヘリウム温度下で量子構造の半導体レーザーに磁場を加え、レーザー媒体の低次元系としての振る舞いの研究を行うことを目指した。2次元電子系、メゾスコピツク物理系と光の相互作用系として極低温下での半導体レーザー発振を見直すことによって、新しい物理が開けてくるを期待した。 極低温で半導体レーザー(LD)のV-I,P-I特性の磁場効果などの多数のパラメータを同時測定できるコンピューター制御の計測システムを製作した。多くのInGaAsPの量子井戸構造型LDで、0-5Tにわたり負の磁気抵抗が観察された。励起電流を一定にして、LD出力光を内部フォトダイオード(PD)で測定しながら、磁場掃引したところ、出力の増加する共鳴現象を0.3-0.4T付近に観測した。共鳴の幅は4Kで0.1-0.15Tであり、温度上昇ともに広がり、20K程度で共鳴は消失する。この共鳴はサイクロトロン共鳴周波数とモード間ビ-ト周波数とが等しいときに起こる。磁場と接合面とのなす角に対する共鳴の依存性を測碇すると、予想される形を示したので、モード間ビ-トによるサイクロトロン共鳴とこの結論づけた。しかし、本年2月の発振前の低励起の半導体レーザーLDとPD実験でこの現象が見つかっり、さらに外部から光励起されたLDとPDの組み合わせでも見つかったので、モード間ビ-トよるサイクロトロン共鳴説は覆されることになった。メカニズムは不明であるが、興味ある現象には違いないので、現在、その究明の実験を行っている。
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