研究概要 |
今年1月に発生した兵庫県南部地震の直後に,淡路島北部に6成分観測システムを設置し地動並進・回転成分の観測とデータ収録システムの動作確認を実施した.その結果に基づいて6成分観測システムを改良し,今年9月中旬から始まった伊豆半島川奈崎沖の群発地震活動にあわせて,伊東市周辺に6成分観測網を展開し観測を続けており,データは公衆回線を利用したダイアルアップ方式で地震研究所に集められている.現在使用しているセンサーは,マグニチュート6クラスの地震であれば約50km程度離れていても記録できる感度を持っているが,川奈崎沖の群発地震活動で記録された最大に地震のマグニチュートは4で,今活動中には地動回転成分を記録することは出来なかった.今後1年以上にわたって伊東市周辺に6成分観測網を展開し観測を続けていくので,観測データを得ることが出来ると期待される. 震源モデルの定式化では,連続分布転位論を地震の地動回転成分励起の問題への適用を発展させ,より一般的な地動回転成分の定式化に取り組んだ.その結果,地動回転成分は,従来のように遠隔平行性空間という特別なものを仮定しなくても,dislocation fluxに関係づけられることが明らかとなった.転位(dislocation)のみでなく転傾(disclination)を含む一般的な震源モデルを考えると,6成分観測のデータは従来の3成分観測では明確に出来なかった震源の転傾を解明するものとなる.今後は具体的な震源モデルを想定して,回転成分及び並進成分の観測データと震源モデルパラメータを観測方程式で結びつける定式化を行う. 予備研究の段階で使用した回転成分センサーは水晶発振子を利用したものであり,その主なノイズ源は電源と温度変化によるものと推定される.現在は,同一の原理を使っているが電源と温度の安定化によりノイズが約1/5に低減化されたセンサーを利用している.また,より感度を向上させた回転地震計を用いて桜島火山における爆発地震観測を実施し,その観測データを基に前項の定式化を適用して減圧過程の実態解明に取り組む.
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