研究概要 |
連続分布転位論を地震の地動回転成分励起の問題に適用した一般的な地動回転成分の定式化は,国際学術誌の論文として1997年度に印刷された。この研究により,断層面上での食い違いの滑り速度の空間変化が地動回転成分を励起するが並進成分の励起には寄与しないことが明らかとなり,地動6成分を計測することで,断層滑りの空間変化が規模の小さな地震についても推定できることが判明した. 伊豆半島の伊東市付近に6成分観測網を展開し観測を続けた結果,1997年3月の伊東沖群発活動において震源域近傍での地震動6成分の観測に成功した.地動回転成分が記録された地震は13例有り,震源域近傍での地動回転成分の観測は世界的に見ても初めてである.これらの記録のうち,群発活動の最大地震の記録を解析した結果,これまでの断層の食い違いのみの寄与を考えた地動回転成分の励起モデルから期待される回転成分よりも大きな運動が記録されていることが明らかになった。そこで,一般的な地動回転成分の定式化で導かれた地動回転成分の式を適用して断層面上での食い違い速度の空間変化を見積もった結果,断層南東端で急激な食い違い滑り速度の変化があったことが推定された.この研究成果は,すでに国際学術誌の論文として受理されており,近々印刷される予定である. 現在使用している回転成分センサーは水晶発振子を利用したものであるが,別の原理に基づくセンサーによる回転地震計開発の可能性を検討した結果,流体の慣性を利用した高感度のセンサーが地震動の回転成分観測に利用可能であることが判明した.この原理に基づく高感度回転地震計を試作し,昨年8月から試験観測を開始すると同時に,この高感度回転地震計を標準計器としてより高感度のセンサー開発の評価研究を行った結果,光計測技術を応用したファイバーオプティックジャイロを改良することで,小地震の微弱な地動回転成分を観測できるセンサーが開発可能であることが明らかになった.
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