研究概要 |
この研究では,海面高度計を搭載した人工衛星TOPEX/POSEIDONの軌道に合わせて,四国沖に黒潮を横断する測線を設け,その測線上で,CTD/XBT観測と曳航式ADCP(音響ドプラー流速分布計)観測をなるべく頻繁に行い,それらの観測によって得た黒潮に関するデータを総合的に解析することにより,従来は相対的にしか求められなかった黒潮表層の流量と熱流量の大きさおよびその時間変化を,絶対値として求めることを目指している. 平成7年度には,1993年秋に始まった黒潮の集中協同観測(ASUKA)の一環として,(1)5月に白鳳丸による,側線に沿った完全なCTD断面観測とXBT断面観測,および(2)5月に白鳳丸,6月豊潮丸,7月と9月に「しらふじ丸」,11月に天鷹丸による,曳航ADCPの流速断面観測を実施した.平成7年11月に終了した2年間のASUKA観測によって,合計41回のCTD/XBT横断観測データと,12回の曳航ADCP観測データを得た.曳航ADCP観測による表層の流速データを解析した結果,(a)黒潮の表層の最強流部の位置(流速を鉛直積分し表層の単位幅当りの流量が最も大きい所を選んだ)が,沿岸に接近している場合(足摺岬から約50km)と,沖合に存在する場合(同じく約150km)の二つのモードがあること,および(b)黒潮の表層の流量(上記の単位幅当りの流量のうち東向流の部分を測線沿いに積分したもの)が,45Sv(1Svは10^6m^3/s)程度と35Sv程度の二つのレベルに分かれること,などが明らかになった. 平成8年度には,これらの観測データを係留流速観測データや衛星海面高度計データなどと組み合わせて,特に黒潮の表層の流量変動の特徴を探りたい.
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