研究概要 |
(1)フィリピン海プレートの沈み込みに伴って,南部フォサマグナに衝突付加したいくつかの地塊の内,正体が従来不明とされていた御坂地塊について野外調査を完了した.特に,水底火山岩類の堆積相や枕状溶岩の流動方向等に注目して,水底火山の復元をめざしてデータを収集した.その結果,現在の御坂山地南西部に直径1-3km程度の枕状溶岩およびハイアロクラスタイトの集合体からなる小火山が密集して分布していることが明らかになった.また,それらを覆っているタ-ビダイトや水中火砕岩の地質も考慮すると,御坂地塊が古伊豆-小笠原弧の背弧リフトで,本州弧に衝突付加後,隆起して現在に至っている可能性が指摘できた. (2)衝突された側の北アメリカプレートの運動像の解明も今年度の課題の一つであった.本課題については甲府盆地周辺に分布する貫入岩の予察的な古地磁気測定を行った.その結果,衝突付加した地塊の前面に存在した北アメリカプレートの最南端部は,約30度時計回りに回転している可能性がある.この結果は,南東方向から突入してくる地塊の前面での運動として,従来から予測していたものではあったが,今回の結果はそれを支持している.今後,系統的な調査と測定を実施する予定である. (3)富士川層群中のトラフ充填堆積物については,従来より野外調査を中心に検討を続けていたが,本年度は,それらの結果を再整理し,補足的な調査も行って精密な堆積相の分類を行った.その結果,トラフ充填堆積物が,地塊の衝突現象の一部をモニターしていることが明らかになった.
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