研究概要 |
(1)昨年の調査によって御坂山地南西部がフィリピン海プレートの沈み込みに伴って南部フォッサマグナに衝突付加した古伊豆-小笠原弧に属していた背弧リフトであることを明らかにした.しかし,この背弧リフトに対応した火山弧の存在については不明であった.今年度は御坂山地の東部に重点を絞って調査した結果,東部には安山岩・デイサイトからなる火山が存在しており,その分布状況は御坂山地南西部のものとは大きく異なっていることが分かった.この地域が御坂山地南西部で認識させた背弧リフトに対応する当時の火山弧であった可能性が強くなった. (2)富士川層群中に発達する安山岩水中火山体の復元を試みた.これは前弧に存在する火山で,主として塊状溶岩・ハイアロクラスタイトにより構成されている.その規模は,直径が6km-8kmで高さが1000m-2000mの火山が2つあることが推定された. (3)藤野木-愛川構造線周辺の地質構造解析から,同構造線が横ずれ成分を持った逆断層であることが分かった.これは南部フォッサマグナに衝突付加したブロックと衝突された側の北アメリカプレート(オホーツクプレート)との相対運動があったことを示している.これは,次年度実施予定の本格的古地磁気学測定の予察的研究である. (4)南部フォッサマグナで,最も初期に衝突したものと考えられている櫛形山地塊についても予察的検討を行った.この山塊を構成する岩石はハイアロクラスタイトやデブライトなどが主体であるが,古地磁気測定に都合のよい細粒堆積物も少量ながら露出していることが分かった. (5)北部フォッサマグナの火砕岩と南部フォッサマグナの火砕岩類との岩相を比較した.北部,南部とも火山弧に近いところでは酸性火山活動が起こり,水中火砕流が発生していたことが推定された.
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