本年度は申請研究の実施最終年度にあたり、本年度実績の概要は次の4点に集約される。 1)異時性の関係を見積もる際の「ものさし」となる系統関係推定法をさらに改善し、正確な基準を確立した。具体的には、Cythere属5種のDNA分析に成功し、これから推定された系統関係がポア・システムの分化に基づいて推定された結果と一致することが確認された。これにより、ポア・システムによる系統関係推定の信頼度がさらに高まった。 2)これをふまえ、貝形虫の成長段階初期におけるポア・システムの分化パターンを4科について調査し、従来の結果と合わせ合計8科13属の系統関係を推定した。この中には異時性の関係を明確に示す形態を持つ分類群の組み合わせはないが、Ishizakiella属とCallistocythere属、Cytherejaponicaと他のCythere属の種などの関係は今後検討を継続するに値する。 3)上記の成果を1997年8月に英国グリニッジ大学チャタム分校で開催された第13回オストラコーダ国際シンポジウムで"Differentiation of the distribution of pore-system…a possible powerful tool for the estimate of ostracod phylogeny"という題名で口頭発表し、好評を博した。 4)上記の成果の一部については研究代表者の神谷が「化石情報から系統進化を考える--貝形虫類のポア・システム」と題して、また貝形虫の蝶番にみられる異時性については研究分担者の塚越が「時間軸と進化のパタン」と題して、それぞれ雑誌「遺伝」に公表した。
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