研究概要 |
本研究の目的は介形虫類の縁辺内曲部(Vestibulum)の形態が生息環境(特に水深で代表される環境要素)と対応している事実を検証することである。そのために、Vestibulumの形態を観察しやすい特定種(Krithe,Cytherella,Cytheropteron属)の個体数を多く集める必要がある。これらの標本は個体数のきわめて少ない深海域を含む底質から抽出するために、本年度は主として顕微鏡下での抽出作業を行った。同時にこれら特定種の生息分布を明らかにし、それら生息地点の環境要素を抜き出し、種ごとに共通する各種の環境要素との対応性を解析した。Vestibulumの機能形態を考察するために、今回購入した顕微鏡を用いてVestibulumの変異を含む形態的特徴を予察的に観察し、体系的分類が可能であることの確証を得た。 しかし、問題点として、Vestibulumの形態変異と環境要素との関係は未だ解決していない。また、Vestibulumの形態形成に関する実験は特定環境要素(水圧、水温、溶存酸素量、各種塩分など)を設定した条件下での飼育実験に難航しているが、浅海種であるXestoleberis属の飼育にはほぼ成功(4世代まで継続飼育が可能)している。これらの経験を踏まえ、次年度に向けてさらに解析できる見通しが得られた。
|