研究概要 |
平成7年度は,分布関係の環境整備,東北本州弧新生代火山岩類の幅広い試料採取,これまでの公表データをコンパイルしてデータベース化することに重点をおいて研究を進めた。分析関係の環境整備として,XRF分析用ビ-ドサンプラを購入設置し,ビ-ド作成実験を行い,主成分〜微量成分元素分析に供するに最適な薬品調合比,加熱プログラム等の検討を行った。その結果,主成分元素分析と微量成分元素分析を同一試料を用いて行えるXRF分析用ペレットの作成が可能となった。これとともに,東北本州弧ならびに関連する地域からの,新生代火山岩類の試料採取を行い,採取した試料の分析用粉末試料の作成と,その化学分析を行った。また,主に,公表データを用いた東北本州孤新生代火山岩類に関するデータベースを作成し,これに基づいた研究報告を学術誌に掲載できた。それらの結果から,次のような事実が明らかになってきている。1)東北本州弧に分布する火山をその地質学的、岩石学的ならびに地球化学的特徴から4つの火山列に区分することが可能であり、特に第四紀においては火山フロント側と背孤側に明瞭な起源マントル組成の不均質性が存在することが明らかとなってきた。2)予察的な新生代火山岩組成の時間的変遷の研究によれば、東北本州孤においては、新生代を通して、基本的には第四紀と同様の火山岩組成の帯状配列が認められるが、中期中新世においてのみ、これが不明瞭となっている。この時代はほぼ日本海が形成された時期に相当している。3)中期中新世をはさんで、それ以前と以後の火山岩組成の帯状配列には明瞭な相違が認められる。4)これらの帯状配列様式の時代的変遷を上部マントルの温度構造の変化として捕らえることが可能である。このような成果にのっとって、現在、議論をより厳密なものとするための微量元素分析精度の向上と、得られたデータの定量的な処理のためのソフトの作成を進めている。
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